反物質、性質違う可能性大 ニュートリノ9年間実験で
宇宙に普遍的に存在する素粒子ニュートリノと、その対になる反ニュートリノの性質が異なる可能性が高いことを9年間の実験データから確かめたとの論文を、国際研究チーム(代表・市川温子京都大准教授)が15日付科学誌ネイチャー電子版で発表した。宇宙の成り立ちの解明につながる成果としている。
ある物質と鏡映しのように対称的な性質の「反物質」は宇宙誕生時には物質と同数あったが、今はほとんど存在しない。出合うと消える両者にごくわずかな違いがあったため、結果的に物質が残ったとされる。
今回の成果について、村山斉東京大教授(素粒子物理学)は「ニュートリノが宇宙の物質と反物質の対称性を崩したということが、ますますもっともらしくなってきた。宇宙の成り立ちの解明に王手をかけた」と話す。
ニュートリノには「ミュー型」「電子型」など3種があるが、空間を伝わると型が変わって「変身」する性質がある。実験はこれを利用し、加速器施設J-PARC(茨城県)から発射したミュー型ニュートリノと反ニュートリノを、295キロ先にあるスーパーカミオカンデ(岐阜県)で捉え、それぞれの変身の仕方から性質の違いをみた。
2009~18年の観測で、ミュー型から変身した電子型は90個、反電子型は15個。性質の違いが最大となるケースで予想した「82個と17個」に近かった。実験の精度は99.7%という。〔共同〕